天神崎について

天神崎は、紀伊半島の観光地で有名な白浜温泉の対岸にある田辺湾北側の岬に位置しており、多くの海洋生物が生息している世界的にも貴重なところです。それは、黒潮の影響を強く受けているにもかかわらず湾内には暗礁が多く、潮がゆっくりと動いて南の海で生まれた種々の幼生の育成を助けているためでもあります。もう一つ大切なことは、後背地には、すぐ海岸林があり腐葉土層が栄養素を補給するとともに、風や雨などによる土砂の海への流入を防ぐことで全体のメカニズムが常に安定している事です。しかしこれだけでは冬場の水温低下を防ぐことができません。幸いなことに田辺湾は西側に大きく開き、その時期には北西の季節風が黒潮を湾内に押し込む働きをしてくれます。これらの条件が整い、日本でも数ヶ所にしか見られない生物の宝庫となっているのです。例えば、暖かい海の代表でもあるサンゴが約60種類もあり、これは北緯34度近くの海では、世界的にも異例の数です。又、潮の引いている2時間ほどの間に行われる磯観察では200種類もの生物が記録されます。田辺湾一帯から取れるウニの種類は約50種類もあります。昭和49年(1974年)天神崎に高級別荘地開発の計画を知った市民有志は、自然は、一度破壊されると修復は困難となるので開発業者より土地を買い戻す運動を開始しました。買い戻すための資金は多額になるため、とても有志の力だけでは集めることができず、やむなく全国の皆様にご協力をお願いし土地の買取募金活動を実施しました。現在も皆様より「心の地主寄付金」としてご寄付をいただき土地の買取運動を行っています。私たちはこの自然環境を未来の子供たちに伝え残すことを願って末永く活動を継続していきたいと思います。